赤ん坊の頃親に捨てられたキリクは、
真行山臨勝寺で棍術を学びながら立派な青年に育った。
しかし、寺の三宝の一つ、滅法棍の正統伝承者となる免許皆伝式の前夜、
イヴィルスパームによって、真行山一帯が邪悪なエネルギーに侵されてしまった。
臨勝寺に住む者は次々とイヴィル化して理性を失い、互いに殺し合い始めた。
滅法棍を持って暴れ始めたキリクは、
彼の幼馴染みで剣術を学んでいたシャンレンによって、
同じく寺の三宝の一つ、末法鏡をその肩に掛けられ、完全なイヴィル化を免れた。
しかし、自分の身を守るため、襲ってくる寺の人々を皆殺しにしなければならなかった。
育ててくれた師匠も辛い修行を共にした仲間も、
そしてシャンレンもキリクの手によってもの言わぬ屍となった。
目を覚ましたキリクの前に、一人の老人が立っていた。
彼は皆伝者に奥義を授けるために来たという。
そして老人は全てを知っていたかの如くキリクに告げた。
寺に起こったことの真相、完全なイビル化は免れたものの、
キリクだけでなく滅法棍までもが徐々にイビル化しつつあること、
末法鏡は、キリクと滅法棍のイビル化を抑える力があること、
もしそれを外す事があれば、その瞬間邪気に取り込まれ寺人と同じ運命を辿るだろう。
滅法棍を手放せば、それが種となって新たな惨劇となる。
つまり、キリクと滅法棍、末法鏡は、常に一つであらねばならない。
そして老人は語った。
ソウルエッジという名の邪剣のことを……!
老人の下で、ともすればイビル化する自分をコントロールする
術と棍法の最終奥義を学ぶキリク。
そして三年が経ち、呪われたその身、
そして第2のソウルエッジになりかねない滅法棍を浄化する為に、キリクは旅立った。
「英雄の剣」と誉れ高いソウルエッジの捜索が
一向に進展しないことに業を煮やした明の皇帝は、
自らの親衛隊を捜索第三陣として向かわせることにした。
行く先々で怪しまれぬよう京劇団を装って旅をすることが決まり、
幼い頃から母の下で武術の修練に励んできたシャンファが花形に選ばれた。
「あなたは大きな役割を担って生まれてきました…
…揺れ動く未来を切り開きなさい!」
そう言い残してやさしかった彼女の母親は、この世を去った。
この旅に何か大きな運命の流れを感じながら、
シャンファは形見の剣を手に旅出った。
イザベラ・バレンタインはイギリスの
名門バレンタイン家の一人娘として大事に育てられてきた。
しかし、ある日を境にバレンタイン伯爵は何かに取りつかれたように家財を使い果たし、
狂気の末に死亡。
一代にして歴史ある名門バレンタイン家は没落したのである。
「あなたは本当の娘ではないわ…、あなたの本当の親がどこかにいるはず…」
優しかった母親は、そう言って父の後を追うように病気で死んだ。
しかし彼女にとって『本当の親』などはどうでもよく、
むしろ両親を失ったという事実が彼女を深く悲しませたのだった。
ある日、両親の遺品を整理しているうちに、彼女は父親の日記を見つける。
彼女の父は錬金術に手を出し、
不老不死の鍵を握ると言われていた
「ソウルエッジ」と呼ばれるものを研究していたのだ。
父親の意志を継ぐ決心をしたイザベラは、同じく錬金術師の道を選び、
「ソウルエッジ」の足跡を追い求めた。
死の商人ベルチー、古物商アダムス家、大海賊セルバンテス…。
核心に近づくにつれ、その存在に疑問を抱くイザベラ。
そして神秘の剣と疑わなかった「ソウルエッジ」の正体を知った時、
彼女の中で何かが壊れた。
こんな物のために父は狂ったのか…!こんな物のために…。
失望と怒りの果てに彼女が新たに掲げた目標は、「邪剣の血の根絶」であった。
邪剣を破壊するには、それ以上の武器が要る!
彼女は持てる知識の全てを使い、
剣にも鞭にもなる変幻自在の剣を創りあげようとした。
しかし、機械的に剣と鞭の状態を切り替えられるだけでは
命を持つ魔剣にかなうべくもない。
その蛇の如き動きの真価を発揮するには
やはり同様に剣に命を吹き込まねばならなかったが、
彼女自身の血を以てしても理想には及ばなかったのである。
ついには太古の魔術に手を出し、
毎晩のように怪しげな召喚の儀式を繰り返すようになってしまう。
それは、冷静さを失い、あがき続けるイザベラの姿であった。
そしてある夜のこと、イザベラの狂気じみた執念に呼び寄せられたかのように、
魔方陣の中に異形の手だけが姿を現す。
想わず呆然とするイザベラの前で、それは彼女の剣に宿る念を舐めるように掴み、
声ならぬ声を発した。
『我《盟約の十字》《滅亡の楯の座》《デクスターパーピュア》をこの剣に与えん…』
儀式は終り、彼の者は去った。
蒼い月明かりの下でイザベラの狂気の結晶は
まるで何かを求めるかの如く節目を鳴らしてうねっていた。
ついに彼女の理想を遥かに超えて、剣は完成したのである。
だが、彼女はまだ気付いていなかった…。本当の親が誰であるかを!!
結局その正体さえも掴めぬまま、
ソウルエッジの消息を見失ってしまった御剣。
一旦帰国するものの、種子島に優る武器は依然見つからない。
あまりの苛立ちから、種子島との御前試合を行う。
右肩を打ち抜かれてしまう。
初めて決定的な敗北を経験した御剣は、対種子島戦のため幾つかの剣法を体得する。
そんな折、ヨーロッパでナイトメアという騎士が、
無敵の剣を持って暴れているという噂が!
「待っていろ、内藤とやら。俺がその剣を奪いに行ってやる!」
再び御剣は大陸へと渡る。
邪剣の破片を入手して帰国したタキは、
破損した愛刀・裂鬼丸にソウルエッジのかけらを打ち込んでみた。
しかし、相性が合わずに断念。
そんな折、恩師トキが放ったと思われる刺客の襲撃が相次ぐ。
難なく返り討ちにするものの、
刺客達の狙いが八兵衛から授かった謎の霊刀滅鬼丸であることが判明する。
「この滅鬼丸には恐ろしい力が秘められている。
この刀をトキに渡してはならん。タキよ、くれぐれも頼んだぞ‥‥‥。」
八兵衛の言葉を思いだしたタキは、隠しておいた滅鬼丸とソウルエッジの融合を試みた。
すると2つの物質は瞬く間に一体化し、どす黒い邪気を放ち始めた。
そして、封呪を施した鞘に収めていなければ、
彼女の力を以てしても押さえきれないほどの凶悪な刀になってしまったのである。
時を同じくして、大陸から新たな邪剣と狂戦士の噂が日本に伝わる。
タキは、裂鬼丸が未だに何かと共鳴し続けていることから、
それが破壊されなかったもう一方のソウルエッジであることを悟った。
ソウルエッジと滅鬼丸。
この2つの武器をぶつけて、相打ちにしようと考えたタキは、
ナイトメアの持つソウルエッジを目指す。
そして、腰に携えた滅鬼丸を見つめて、タキは考えた。
「これほどまでの刀とは‥‥‥しかし、何とか使いこなせないものだろうか‥‥‥。」
雲のごとく自由気ままな旅を続ける琉球王国の海賊マキシ。
インドの港で、彼は義兄弟のキャンに留守を任せて夜の街に繰り出した。
ちょうどそのころ、西への脚を得るためインドまで出てきていたキリクは、
港に停泊していたマキシの船に目を付けた。
「いい目をしてるねぇ。あんた気に入ったぜ。兄貴には俺から頼んでやるよ。」
キャンに気に入られたキリクは、マキシの帰りを船で待つことにした。
しばらくすると空の雲が濁り始め、強い風が吹き出すやいなや、
彼方にあったはずの雷雲と共に怪しげな船が近づいてきた。
マキシの船に横付けするや、
突然瞳に輝きのないバケモノの群れが乗り込んできてキリクを襲った。
激しく降る雨の中、キリクは訳も分からず滅法棍を持って応戦するが、
マキシの子分たちは皆バケモノ達の刃に倒れていった。
そこへマキシが戻って来た!
「てめえら‥‥‥覚悟しやがれ!」
マキシとキリクは、たった2人でバケモノと闘い、群れを撃退した。
しかし、大きな斧を持った大男〜アスタロスが、
キャンに致命傷を負わせ、去り際にキリクから末法鏡を外してしまったのである。
理性を失ったキリクが、マキシを襲う。
寸でのところで末法鏡を元どおりにしたやった途端、キリクは気を失って倒れた。
「兄貴‥‥‥キリクを西へ連れて行ってやってくれ。
そして、その目で世界を見てきてくれよ。俺たちの代わりに‥‥‥」
そう言ってキャンは息を引き取った。
一瞬にして全てを失ってしまったマキシは、
キャンの遺言通りキリクと共に旅をすること、
そしてアスタロスへの復讐を誓いながら、沈んだ船の向こうの水平線を見つめた。
彼女がはっきりと意識を取り戻したのは故郷の家、自分のベッドの上だった。
身体の傷もほとんど癒え、再びパン屋の看板娘に戻ったソフィーティアは、
元通り平和な日々を送っていた。
しかし、妹と買い出しに出かけたある日、突然急なめまいに襲われ倒れ込んでしまった。
「たくさんの人の命が……消えていく……ソウルエッジ……?」
意識を失ったソフィーティアを抱きかかえ家まで運んだのは、
隣町の青年ロティオンであった。
2人はその運命的な出会いをきっかけに、互いに強く引かれ合うようになり、
やがて結婚の約束をするのだった。
そして、ヘパイストスにその報告をするため、
2人が神殿を訪れた時、ヘパイストスが2人に応えた。
ヘパイストスは、残ったもう一本のソウルエッジが力を取り戻しつつあり、
再びソフィーティアの助けが必要であることを告げる。
「ならば僕が彼女の代わりに!」ロティオンが訴える。
「ロティオンよ、そなたは刀鍛冶。今度はそなたが彼女を守る武具を造るのだ。」
そう告げるとロティオンに聖なる鉄の塊を授けた。
そしてソフィーティアは再び神託を受けた。
旅立つ彼女の手には、ロティオンが造った剣と盾が握られていた。
イヴィルスパームに侵された土地を浄化しながら邪剣を追う彼女の瞳は、
新たなる決意に満ちていた。
初めその噂はどこからともなく流れてきた。
その異様な一ツ目の付いた大剣を異形と化した
右腕に携えた青騎士の紅い瞳を見た者は、
屈強の戦士から泣き叫ぶ女子供、果ては虫けら一匹に至るまで皆、
魂を貪り喰われるようにその手にかけられた。
その大剣の一ツ目はまるで、
生ある者を喰らう度に悦びの笑みを浮かべるように見えた。
そして、その魔手を逃れることが許されているのは
彼に付き従う「異形の者ども」だけなのだ…。
「噂、あくまで噂話だよ。」
「嫌な話だぜ、まったく‥‥‥。」
あの怪光が見えた夜から3年、
ここドイツ山間部のある農村の夜はいつもと変わらなかった…。
崖の上に満月を背にした紅い瞳の騎士の姿がある他は!!
幾多の街や村をのみ込みながら、黒い森を目指すそれは、
あのキャプテン・セルバンテスさえし凌ぐ、次なる恐怖の姿だった…。
……父さん、もうすぐだよ……
マネーピットへ戻ったヴォルドは、先頃起きた大豪雨によって、
縦穴が水浸しになっているのに気付く。
あらゆる手段を尽くして排水と修復にあたるが、
結局水没してしまった部分は諦めなければならなかった。
そんな折、亡き主・ベルチーがソウルエッジに関して書き残したメモを探して、
一人の女戦士がマネーピットを訪れた。
主人の聖域を侵す者は何人たりとも生きては返さない。
暗闇から女戦士に襲いかかるヴォルド。
しかし、彼女は手に持った奇妙な武器で応戦し、ヴォルドを苦しめた。
熾烈を極めた闘いは、
女戦士が自分の武器を防御に回して逃げたときに決着がついた。
邪魔者を追い払うことに成功したこと報告すべく、
ヴォルドは亡き主の棺の前に膝間づいた。
すると突然懐かしい声が耳に響いてきた。
『ヴォルド、お前は感じたか?あの女の妖気を!
あの女、ソウルエッジの匂いがする……。
あの女を追い、今度こそソウルエッジを手に入れてるのだ。いいな、頼んだぞ…』
亡き主人の声を聞き、
血の気がないヴォルドの灰色の頬が僅かに赤みを帯び、
そしてその上を熱いものが止めどなく伝う。
そしてヴォルドは再びソウルエッジを求めてマネーピットを旅立つのだった。
ここ…どこだ……おれは…なんだ……。
息も詰まるような熱気と、
耳にこびりつくように低く響く呪文の詠唱の中、それは目を開けた。
やがて、大広間全体にに響いていた詠唱が消えるように止むと、
一際高い位置に立っていた男が大きく息をついて、口を開いた。
「無からの創造だ…」
…なんだ…この化物は……!これが……おれ…なのか……。
「私はとうとう神への第一歩を踏み出した…」
男は恍惚としてつぶやき続ける。
うるさい…だまれ……ん?
生まれた瞬間に怒りを覚えたそれは男の背後に
何か別の視線を感じた。だが何も見えない。
ぬ…うぅ……!
大量の記憶が流れ込んでくる。
それは何かを探し求めて戦っている戦士のもののようだったが、
やがて、大量の断末魔の響きに変わっていった。
恐怖、絶望、煌めく刃、激痛、そして闇。
うご…があぁぁぁぁ……!!
それは負の産声をあげた。
神殿の奥で大神官クンペトクーは自らが創り出した巨人に使命をあたえた。
「魔剣ソウルエッジを探せ!」
巨大な斧をたずさえて、
無言のまま神殿を出て行く巨人を見送りながらクンペトクーは薄い笑いを浮かべた。
「神もが望む巨大な力…、それをもってすれば私は神にもなれよう…!」
祖国が、真に隣国からの大規模な襲撃を受けんとしているとの噂を、
旅先で耳にした黄は、『救国の剣』ソウルエッジ捜索を中止して急遽帰国した。
途中で師の娘、成美那と出会い、これを連れ戻したのだった。
沿岸防衛隊へ戻り、水軍提督・李瞬臣直属となった黄は、
ある日美那が再び家を飛び出したという噂を耳にした。
しかし、彼は牙を研ぐ隣国を前に動くわけにはいかなかった。
東の隣国がすぐに攻めてこないことに苛立ち、
いつもの冷静さを失った黄は、
小さな海賊船を深追いし、多くの部下を失ってしまった。
その数日後、黄は沿岸防衛隊大隊長の任を解かれてしまった。
黄を召喚した李瞬臣提督は彼に命令した。
「黄星京、お前には今一度『救国の剣』捜索の任務に就いてもらう」
朋友・成漢明の心情を察した李瞬臣は、同じく苛立ちを隠せない黄に、
『救国の剣』探索を名目として、美那の捜索を依頼したのである。
李瞬臣の真意を瞬時に読み取った黄は、何も言わずに再び西へと向かった。
かつて、富士山麓の地に卍と呼ばれる忍びの一族が隠れ住む里があった。
ある年の事、一族の力に目を付けた時の権力者は卍に使者を送り、
一族の長を城に招いたが、卍の長は高齢であったため、
一番腕の立つ者が一族の代表として城へ赴くことになった。
予想通り要望は卍一族に傘下に入れというものだったが、
卍は戦乱の世を忍んで暮らす一族。
幾日にわたるしつこい誘いを彼は丁重に断り、里への帰路についた。
しかし、里に着いたとき、そこには何もなかった。
卍一族が傘下に入らなかった時のために、軍が待機していたのだ。
何度も誘い、時間を稼いだ理由は不意打ちのためであったのだ…。
「手に入るならば良し、でなければ根絶やしじゃ。
野に放っておくには危険すぎる力よってのう…。
奴も確実に殺せ。
なに、いくら腕が立つとて、たった一人では何もできまい。」
ただ一人残された男は追手から逃れながら復習の機会をうかがってはいたが、
所詮は一人。強力な権力の組織の前には無力な存在であった。
切り込みはしたものの、
標的に辿り着くことすらできずに反撃を受け、結果右腕を失った。
ついに追い詰められた男には義手を手に以前から
一族に伝わていた地下水脈へ逃げるのが精一杯だった。
妖気ただよう地の底を漂いながら彼は思いだしていた…。
海を越えた国にあるという最強の武器の話を!
それをもってすれば奴等など皆殺しにできるに違いない!
ただの噂とばかり思っていたが、
今はそれが残されたただ一つの道とさえ思える!
半分狂気にも似た思いをもって彼は海を渡り、
ソウルエッジを求める旅に出た。
やがて彼は、辿り着いた土地で青騎士の噂を耳にし、
その惨劇の後を目にすることになる。
そして、その結果生み出された絶望や増悪、
復讐心を感じとり、彼は考えるのだった。
…一族の仇を討ちたいと思う気持ちは今も変わらない。
だがそれでは俺も奴や青騎士と変わらないのではないか?
復讐を果たした後に、何が残るというのだ?
そんな復讐を皆が望むだろうか…?
吉光という男の中で何かが変わろうとしていた。