滅してなお勢いを止めない邪剣の炎は再び世界に散ろうとしていた。
キリクは力強くしかし静かに呟く。
オン・バサラ・ダラマ・キリーク
彼の身を守っていた末法鏡が弾け同時に邪悪なる炎は封印された。
度重なる激闘の末、彼は内に潜む邪気を迎える術を身につけていた。
そのに甘んじる事なくさらに過酷な修行に身を置くキリク。
地が果て、空が始まるこの場所で彼の双眸は遙かなる蒼穹を写した。
破滅の脈動に呼応するかのように彼女の護法県は真の姿を現した。
剣は彼女に比類なき力を与え、彼女は剣に汚れなき魂を込める。
果てしなき続くとも思われていた戦いはシャンファの勝利で決着をみた。
あたりを覆っていた乱雲が割れ、溢れんばかりの曙光が降り注ぐ。
「これでよかった筈……よね、母さん」
幼さすら残る面立ちに光を浴び彼女はまぶしさに目を細めた
「そんな…はずは…」戦いを通じ、予感は確信となった。
邪悪な存在を討ち果たしてなお、剣はその動きを止めようとしない。
彼女の身に流れる邪悪な血統がその剣を動かしていたのだ。
しかし、彼女はその事実を受け止める事に抵抗は感じなかった。
「胸のつかえが取れたような、そんな感じがする…」
呪いの鎖は解き放たれ、祝福なき新たなる旅立ちが今、始まる。
数知れぬ激闘の末、ついに御剣は邪剣ソウルエッジを手に入れた。
帰国の途についた矢先、彼は洋上で海賊の襲撃に出会う。
屈強な海賊達に囲まれた御剣。
自分に向けられた数多くの銃口に不敵にも笑いを浮かべて呟く。
「一対一にも飽きてきた所だ…試し切りに付き合ってもらうぜ」
戦国の用心棒と名を馳せたこの侍の消息は以降ようとして知れない。
「…邪気よ……散れえぃっ!!」
タキの裂帛の気合いを乗せた滅鬼丸の一撃がインフェルノを貫いた。
敵と同じ邪性を持つ武器を彼女は自在に御する事が出来たのだ。
が、かすかな滅鬼丸の衝動と共に彼女の胸騒ぎは収まらなかった。
「…終わらない、というのか」
しかし彼女はやり遂げるだろう。
そしていつもの台詞を言うだけだ「封魔完了」と…。
邪も滅ぼした代償は大きかった。
「へっ…遅かったじゃねえか」
「そんな…嘘だろ?……」
「俺は…ここまでだ…」
「それと……キ…リ……」
「…!!…マキシーっ──」
キリクは何も喋ろうとしなかった。
シャンファも黙って立っている。
風は吹き、雲はその形を変える
人々の営みなど知らぬかの様に。
「…楽しかったぜ…」
不意にその雲が答えた気がした。
鍛冶神ヘパイストスの信託を成し彼女は恋人の待つ故郷に帰った。
「ロティオン、私…」
「解っているさ、ソフィー」
待ちかねた街の皆の祝福のもと、婚礼を挙げる二人。
そして月日は流れ、彼女は新たな生命を授かり、育む事となる。
「私にはもう届かないけれどこの子には神様の声が…」
問いを知ってか知らずかその子はただその微笑みを母に返した。
時は来た、幾多の勇者の魂を奪い邪険は姿を変え無き父の姿を映す。
「我が愛しき息子ジークよ…」
「ち…父上……」
「この剣で私を貫くのだ。」
「…?!」
「わが姿はまやかしに過ぎぬ。今一度自らの行いを省みるのだ」
父の墓前に立ち、彼はつぶやいた。
「俺に償えるものなのか…」
彼は旅立った。
父の意志を抱き、罪と言う名の十字架を背おって。
邪剣を手にした途端凄まじい負のエネルギーにヴォルドは身悶えた。
「俺に身を委ねるのだ……」
懐かしい声が頭の中に響いた。
すると嘘のように苦痛が消え去り彼は記憶と共に若さを取り戻した。
今やはっきりと開かれた瞳には、亡き主の面影が映されている。
今まさに、主の願いはかなった。
それは彼の願いでもあったのだ。
彼は永遠の至福を手に入れた。
誰も訪れない空虚な暗闇の中で。
アスタロスはソウルエッジを手に魔人クンペトクーの元へ参じた。
「おお、アスタロスよく戻った。ついに神を超える力が我が元に」
「んぐっ…なっ、何をする!離せ…や、やめるのだ!!」
「…タマシイガ…タリナイ」
紅蓮の業火に包まれ、二人の姿は次第に曖味になって行く。
果たしてアスタロスの真意は何か今やそれを知る術はない…。
救国の剣の言い伝え。
その真実は人を狂わす禍いの邪剣だった。
邪剣の化身との戦いで傷を負ったファンに、美那が手を差しのべる。
「私だって、もう一人前なのよ」
「……認めよう………有り難う」
「もはや伝説には頼るまい、我等自身の手で国を守ろう。」
灼熱の志士達は戦絶えぬ海へ出る
祖国を、そして民を守るために。
彼等は、後世民族の誇りとなろう。
名将:李瞬臣が名を残したように。
「悪鬼よ、我が刀の錆となれ!」
吉光の白刀が、邪剣を滅した。
銘が、その時邪剣より稲妻が走り、彼の愛刀は妖異なる光を宿した。
「我が刀も邪剣に……?否!!に我が名を冠しこれを御さん」
「義を見てせぎる勇無きなり」
貧しき民の為に彼は立ち上がった。
やがてその勇名は国中に知れ渡りその名の元に好漢典が集まった。
義賊の首領となった初代吉光。その名は歴史の闇を駆け今に至る。
インフェルノは幾多の救われぬ魂と共に深遠なる闇へと消えた。
溢れ出る力、純粉なる狂気、そして破壊への衝動……
死闘に傷つきリザードマンはさらなる悪夢に身を委ねる。
新た破壊と殺戮を求め、雄叫びをあげるリザードマン。
それに誘われたかの如く、異形の物達が月光の下集結する。
彼の率いる冷たき血の集団は次の獲物の匂いを探していた。
この谷に吹き抜ける風を遮るものはなにもない
内なる悪に決着をつけた戦士はこの風果てる先を見続ける。
幼少の思いと、父の勇姿、狂気の始まり、そして黒き風……
「ジーク、3年もの間何を……」
「また、そのうち話すさ」
懐かしい顔、見たこともない顔。
”黒き風”は健在の様だった。
「魔物達が!」「行くぞ!!」
今、新たな風が吹き始める。
激闘の果てにロックはバングーを救出し、母なる荒野に帰った。
バングーは少しよろめきながらもロックの斧を高く掲げて言った。
「心配しないでよ、ロック。僕ならほら、大丈夫さ。」
あれからどれくらい経ったのだろう。
バングーは逞しい青年に成長した。
彼は大きな雲を見るたび思い出す。
あのときのロックの言葉を。
「お前はいつか旅に出るだろう。自分を自分の魂を探す旅に。」
辛うじて最後の敵を倒したミナ。
力を使い果たし倒れようとした瞬間
「国を救うのではなかったのか」
「あ…………黄………」
美那の頬がみるみる紅く染まる。
抜け出そうにも力が出ない。
帰郷した美那に更ら難敵が待つ。
金家のドラ息子のプロポーズだ。
「おいらと結婚してくれよう」
「牛だって百頭連れて来たよう」
「はぁ………」
「また家出しちゃおうかしら」
彼が失って久しい物
かつて彼を支配していた物
使い手を失った魔剣に手が伸びる再び一つになる時が来たのだ。
未だ消えぬ負の炎をかき分け一人の男が姿を現す。
己の一部を取り戻した彼は全てを思い出し、途絶えた鎖は繋がった。
彼の船は再び海を恐怖に染め烈強の軍艦すら深瀾へと消しさる。
「鎖をあげよ、帆を張れ!我が名はセルバンテス・デ・レオン!」
「やれやれ、やっと着いたわい今回は骨の折れる旅じゃった。」
「ふむ。キリクもそろそろかの、”あれ”を試してもよかろう。」
「キリクよ。」
「はい、師匠。」
「ちょっとそこで待っておれ。」
「………師匠、その姿は!!」
「内なる邪を御する方の一つ、邪を似て邪を制す法を授けよう。」
「心せい、この儂を倒してみせよいくぞ、キリク。かあぁーっ!」
雲を貫く光の柱が立ち上がり全ての者に時が来たことを告げる
膨れ上がる邪念に対抗するかのように強き破邪の力を秘めた霊剣
より強い魂を求める邪剣にとってそれは至極の糧となった
邪悪な波動が護法剣に満たされ新たなる禍いの剣が産声をあげた
全世界に届かんとばかりにインフェルノの歓喜の声が響く
希望は消え去り
今、暗黒時代が幕を開ける